求められるトレーシングレポートの
書き方とは
―書き方編―

本当に必要な「トレーシングレポート」はどのような視点を重視して記載すればいいのでしょうか

2022年3月9日公開

前回のコラムでは、調剤薬局における他医療機関向けの情報提供書、いわゆる「トレーシングレポート」がなぜ重要なのか、どのような工夫をして始めたら薬局で活用することができるのか実際の取り組みを例に挙げながら説明しました。
前回記事「求められるトレーシングレポートの書き方とはー取り組み編ー」はこちら
今回は、薬剤師目線と医師目線で本当に重要な「求められる」トレーシングレポートについてお話します。

目次

薬局薬剤師が作成しやすいトレーシングレポート内容とは

株式会社グリーンファーマシー(西東京市)では2020年9月からトレーシングレポート作成の活動に取り組み始めました。それ以前はレポートらしいレポートはほとんど作成実績がありませんでした。また、今回トレーシングレポート作成のために特別な研修は行なっていません(作成マニュアルの配布のみ実施)。
<取り組み実績概要>
取り組み期間:2020年9月から2021年9月までの13ヶ月間
薬局数:17店舗(内訳:病院門前5店舗、クリニック門前10店舗、面薬局2店舗)
薬剤師数:約80名
トレーシングレポート作成件数:合計205件

レポートの内容別第一位は、約40%を占めた「残薬又は服薬状況」に関する報告でした。第二位は10%弱の「副作用の可能性報告」。この2つで全体の過半数を超える結果となりました。

図1 トレーシングレポートの内容別内訳

その他主たる内容として「吸入指導」(9.6%)、「長期分割処方」(8.7%)、「併用薬、薬物相互作用」(6.7%)などがありました。

結果から推察できることの一つとして、これらの上位項目に関しては、薬局薬剤師にとって既知の日常業務の延長線上にも位置付けることができ、それ程負担感なく取り組める可能性が示唆されます。

その他に注目に値するレポート内容項目として「減薬の可能性(同種同効薬の指摘含む)」(4.8%)も一定の件数があります。この内容は「服用薬剤調整支援料2」(100点)につなげることができる点が経営的には大きいと考えています。同支援料の取り組みにおいて、実践されている症例の多くが、同種同効薬に関係するものだということが知られており、今後今まで以上に意識的に活用されて然るべきだと考えています。

このように、内容によっては思ったほどハードルが高くはないトレーシングレポートですが、中でも「残薬」または「服薬状況」に関する報告は、現場にとって特にハードルが低いと言えるのではないでしょうか。経営者としてはまずこの部分について、組織的に取り組むことが第一に求められると言えます。その結果、国全体で年間29億円とも言われる「残薬」(処方されて使用されていない医薬品を金額換算した2015年の厚労省による報告)減少につながれば、政府としても政策の意図したところであり、それ以上に次世代のための「持続可能」な仕組み作りへ、薬剤師として貢献できる価値ある取組と感じています。

医師視点で考えるトレーシングレポートのありがたい」姿

さて薬局経営⾯はさておき、「ありがたいトレーシングレポート」とはどういうものか、受け取る⽴場である処⽅医師視点で考えてみたいと思います。 外来・在宅医師は、診療後、次の診療までの間に患者にどんな変化があるか知りたくても (⼊院中と異なり)直接その様⼦を把握できません。 しかし、薬局薬剤師の情報提供によって、もしも表1のように求めていた情報を得ることができれ ば、次回の診療に役⽴てることが出来ます。 すなわち、トレーシングレポートを作成するチャンスとも⾔える機会が、こういった様々な場⾯(表1)で存在すると⾔えるでしょう。

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表1 トレーシングレポート作成機会の分類

表1では、処⽅後に医師がよく気にかけるであろう内容について4つに分類してみました。

①ハイリスク症例における病状変化
②ハイリスク薬の変更後の変化
③治療の動機付けの状況
④薬を正しく使えているか

では、実際の運⽤⽅法について仮想症例で考えてみましょう。
※患者さんは実在ではありません

来局した患者さんの情報

  • 年齢70代前半女性、ややふっくらした体格
  • 大学病院、糖尿病内科でアマリール®1mg分1朝食後で新たに服用開始
  • 家がやや遠いからか、初めて服用する薬だが30日分と多めに出ている
  • 併用薬としては以前から処方されているメトグルコ®、本人曰く残薬があるとのこと
  • マンションの3階で一人暮らしで、20分後の帰りのバスを気にしている

薬剤師の考えと対応

アマリール®は低⾎糖リスクがかなり⾼い薬の⼀つ。 昼⾷は⾷べたり⾷べなかったりとのことで、ますますリスクが⾼い。 またアマリール®が追加されるということは糖尿病のコントロール悪化が想定される。 もし今は無くても⼝渇、頻尿、意識障害など⾼⾎糖症状の出現に注意が必要。 今⽇はそれほど時間に余裕がないようなので、簡便な説明にとどめつつ、1週間後に電話フォローしたい旨を伝え許可を得た。


ー⼀1週間後の電話による服薬フォローにてーー
新規処⽅のアマリール®は、何回か飲んだら『便秘になった』ので⾃⼰判断でやめてしまったという。 『それはそれは、おつらかったですね』 と、まずは患者の⼼情を受け⽌めつつ、アマリールによる便秘はそれほど典型的ではないことも伝え、もし可能なら便秘対策をしつつ、もう少し薬を飲んでみること、再開が難しいようであれば次回の受診予約を早めることを促した。
③治療の動機付け状況に該当
→⾃⼰中断の状況報告及び補足指導によってトレーシングレポートを作成可能

幸い、⾼⾎糖症状、低⾎糖症状はいずれも今は無いというが、今後、万が⼀該当するものがあれば早期の受診を促した。
①ハイリスク症例における病状変化、②ハイリスク薬の変更後に該当
→将来の変化に対する備え、新規ハイリスク薬処⽅後の経過報告、いずれもトレーシングレポートを作成可能

また、メトグルコ®残薬に関しては次回持参してもらうことで薬代⾦が少し安くなる可能性を伝えた。その際、『なんでこの薬は必要なの?』と質問があったので、インスリン抵抗性を改善する貴重な薬であることと、糖尿病が原因で⾎液透析に至る合併症患者が⼤変多い事実をオブラートに包んで伝えた。
③治療の動機付け状況に該当
→理解不⼗分な状況の補足指導によってトレーシングレポートを作成可能

『それは怖いわね。でもね、先⽣やあなたには申し訳ないけれど、実は身体のことは正直どうなってもいいのよ。周りに頼れる親族も居ないし、そんなに⻑⽣きもしたくないのよ。薬はこれからどうしようかしら』との発⾔あり。背景をその後も少し黙って聞いてから、『なるほどそうなのですね、お話下さりありがとうございます。そういった思いについても医師と共有してもいいですか?』と聞き、許可を得た。
③治療の動機付け状況に該当
→どのような医療を受けたいのかという価値観の共有によってトレーシングレポートを作成可能

『でも、ゆっくり話を聞いてくれたから少し真⾯⽬にお薬を飲もうかな』との発⾔あり。そこで、アマリール®の服用方法ついて指導した(具合が悪くて⾷事が取れない時は無理をして飲まなくていいが場合によるので医療機関に相談すること等)。
④薬を正しく使えているかのフォローに該当
→服用方法に注意が必要な薬の使い方の補足指導によってトレーシングレポートを作成可能

また、薬だけに頼らない⽣活姿勢も⼤切であることを伝えた。⾷べ過ぎを控えるのは勿論、3階のマンション自室までエレベーターではなく階段を使うなど、普段の⽣活そのものが治療だと考えると効果的であるなど話をした。
③治療の動機付け状況に該当
→薬物治療以外でできることについての補足指導によってトレーシングレポートを作成可能

『なるほどね、できる範囲でやってみます。ありがとう』そう⾔われ、電話を終えた。

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このように、⼀つのケースでも、レポート作成チャンスが多くあることがイメージ頂けたでしょうか?

業務の合間に「読ませる資料」として押さえたい書き方

できるだけ端的で、要点が明確、見やすい。

在宅医療は特にそうですが、法⼈間の書類やり取りが⾮常に多く、中には報告義務があるから作っている『書類のための書類』となっており、受け取り側が正直読む気になれない資料も散見されます。 そういう状況ですから、せっかく良かれと思って熱意を持って書いたレポートでも、⼩さい字でぎっしりと書かれ情報過多、結論が後ろのほう、要点が不明確、であるとなおさら埋もれてしまいます。

<「読ませる資料」作成で気をつけたいポイント>

・すべての情報が書かれている
情報量は多過ぎず、少な過ぎず、端的で要点を明確にする(多過ぎる資料が⽬⽴ちます…)
・何のための資料なのかわからない
「⽬的・概要」を⾒やすい位置に記載、なるべく結論から先に、経過報告であれば「変化」を中⼼に
・決まったフォーマットに無理やり入れ込む
字は⼩さすぎないよう設定の変更や余白を活用するなどフォーマットにも「読ませる資料」の工夫を

トレーシングレポートとの付き合い方

このように「思いやりのある」レポート体裁だと、読み⼿に喜ばれます。忙しい業務の合間に読む物なので、こういった点が特に⼤切になるかと思います。逆にこういった点で特に練りこまれていれば、「お!?このレポートいいね!書いたの誰?」 と⽬に留まり、薬剤師・医師の信頼関係の構築にもつながっていきます。 そういう意味では、トレーシングレポート作成は、⼀つの広報活動でもあると⾔えましょう。こうして、内容的にも、体裁的にも素晴らしいレポートが増えていくことで、地域の薬剤師の信頼感・存在感が増していくと、今後の地域医療はますます⾯⽩くなっていくのではと思います。

参考文献・資料

[薬生 発0129第6号]医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の 一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000731165.pdf

執筆者プロフィール

村野 賢一郎

株式会社グリーンファーマシー 代表取締役
在宅医療専門医(日本在宅医療連合学会)
麻酔科認定医(日本麻酔科学会)

東京慈恵会医科大学卒。終末期癌患者等を対象とする緩和医療を志し、麻酔科、在宅医療の現場で修練。現在も東京三鷹市を中心に在宅緩和医療の現場に従事。その傍ら、2017年より、株式会社グリーンファーマシー代表取締役。薬局薬剤師の社会的貢献度向上が医療全体の質向上につながると考えて薬剤師育成など実施している。

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