求められるトレーシングレポートの
書き方とは
―取り組み編―

これからますます重要になる服薬提供書「トレーシングレポート」に

前向きに取り組むことができるようになるにはどのようなところから始める必要があるのでしょうか

2022年1月12日公開

今回は、調剤薬局における他医療機関向けの情報提供書、いわゆる「トレーシングレポート」をテーマに取り上げます。

なぜ今「トレーシングレポート」が調剤薬局で重要なのか?

建前から本音まで理由は様々ありますが、中小調剤薬局経営の視点から無視できない技術料の柱である「地域支援体制加算」と「トレーシングレポート」がとりわけ密接な関係にあるということにあります。極端な話、トレーシングレポートを作成できなければ、調剤基本料1及び地域支援体制加算を算定している中小規模調剤薬局においては、近い将来経営自体が継続不可能となる可能性すらあります。

トレーシングレポートの取り扱いの変化

このように危機感をお話しするには理由があります。ご存知の方も多いとは思いますが、調剤薬局業務におけるトレーシングレポートの位置づけは、改正薬機法において令和3年8月からスタートした「機能別薬局の認定制度」によってとりわけ大きく変化しました。近い将来、高い確率で地域支援体制加算の条件変更が予想されていますが、そのモデルとなるのが先程の「機能別薬局」のうちの「地域連携薬局」認定要件であると考えられます。「地域連携薬局」認定要件が、地域の他医療機関への情報提供(すなわちトレーシングレポートなど)の必要回数が、毎月平均30件に急増(今までの年12回から比較し年換算で12倍)したのです。

毎月30件、と聞いておそらく途方に暮れる経営者、薬剤師の方々が多いと思われます。たしかに、経営者から現場に相談しても「そんなに書くネタが無い」や、なんとか現場が苦労して作っても、場合によっては医師から「こんなものを送ってくるな」と苦情が来ることもある始末…。では一体どう対処すれば良いのでしょうか?

調剤薬局におけるトレーシングレポートの取り組み

弊社(株式会社グリーンファーマシー、東京都西東京市。東京地区中心にクリニック門前、病院門前、面薬局など17の薬局を運営。)では、前述の地域連携薬局の認定条件を前もって予想していたわけではありませんが、2020年秋以降トレーシングレポート作成支援の取り組みを継続的に行ってきました。その理由は、薬局主導で提供可能となる「服薬情報等提供料2」等を算定するという経営的事情「薬剤交付後のフォローアップ」が改正薬機法で義務付けられた点もさることながら、代表者である私が在宅医療専門医としての立場から「薬剤師が薬剤師ならではの、より役立つ情報を提供してくれたら、少なからず患者のためにプラスになるだろう」と感じていたためです。そこで、この約一年の取組からの気づきを読者へ還元し、地域連携薬局の認定要件クリアのために、地域医療の質向上のために、微力ながら貢献出来ればと思い、実際の取り組みを紹介します。

レポートを作成しやすいシステム

弊社で利用していた既成の電子薬歴にはトレーシングレポート作成のための希望通りの仕組みが当時なかったため、自前のシステムを開発しました。その際には、現場の薬剤師にかかる負担を最小限に抑える事を意識した設計を心がけ、プラットフォームとしては専門的知識が無くても比較的開発が容易で、かつ複数店舗間のクラウドデータ共有が可能なFileMaker pro®を採用しました。

開発上、特に注意した点およびその目的は具体的には下記です。

画像1 グリーンファーマシーのトレーシングレポートに施されている工夫

工夫① 何度も同じ情報を入力する手間を省く
担当薬剤師氏名、患者氏名・生年月日、医療機関情報などの転記無駄を省き作成障壁を低減する。

工夫② 「内容概略」を選択
作成し易さ向上、読み手視点での見やすさ向上、蓄積データの分析性向上。

「内容概略」をドロップダウンリストから選ぶことができる
「内容概略」をドロップダウンリストから選択できる

工夫③ 書いたレポートにより算定する加算をドロップダウンリストから選べる
どの算定につなげるかを作成前から意識させ確実な加算につなぐ。実際には、薬剤師判断で作成が可能な服薬情報等提供料2が全体の9割以上を占めた。

「算定予定加算」をドロップダウンリストから選択できる

工夫④ グループ全体で作成レポートを参照し合える
他拠点の記載したレポートも確認できるのでグループ全体でのレベル均一化が可能になる。(画像2参照)

画像2 グループ薬局間で共有されているトレーシングレポート一覧

工夫⑤ 優良レポートについて「良」マークでラベリング
どんなレポートが望ましいのかというメッセージを運営側から送ることができるようにし、「優良レポート」として検索表示できるようにすることで、作り手の参考資料としてアクセスしやすくなる。(画像2参照)

ひとつひとつは小さな工夫ですが、このように現場の薬剤師にかかる負担を最小限に抑え、目的を明確にすることが、継続的にトレーシングレポートに取り組むために重要であると考えています。

次回のコラム

今回のコラムでは、トレーシングレポートの重要性とグリーンファーマシーでの取り組み、活用事例をご紹介しました。次回のコラムでは「薬剤師目線で書きやすい」トレーシングレポートと受け取る側の「医師目線で求める」トレーシングレポートについてお話します。

参考文献・資料

*1:[薬生 発0129第6号]医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の 一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000731165.pdf

*2:[薬生 発0129第6号]医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の 一部を改正する法律の一部の施行について(認定薬局関係) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000731165.pdf

執筆者プロフィール

村野 賢一郎

株式会社グリーンファーマシー 代表取締役
麻酔科認定医(日本麻酔科学会)
在宅医療専門医(日本在宅医療連合学会)

東京慈恵会医科大学卒。末期癌患者を始めとする終末期医療を志し、麻酔科、在宅医療の現場で修練。現在も東京三鷹市を中心に在宅緩和医療の現場に従事。その傍ら、2017年より、株式会社グリーンファーマシー代表取締役。薬局薬剤師の社会的貢献度向上が医療全体の質向上につながると考えて薬剤師育成など実施している。

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『CARADA 電子薬歴 Solamichi』では、トレーシングレポート(服薬情報提供書)の作成が可能です。医療機関や医師名の自動反映はもちろん、処方歴のある薬剤名もワンクリックで反映が可能。情報提供の概要もテンプレートを利用すれば簡単に選択できます。また、服薬状況や提案についてもテンプレートから文言を選択できるので入力の工程をできる限り削減し、薬剤師の入力の手間を減らします。

薬歴連動だから医療機関や医師名などの基本項目が自動反映

処方薬や併用薬の薬剤名もワンクリックで反映

テンプレート利用で手入力を最小化できるため時間と労力を削減

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