新時代に求められる
「一歩先の薬局経営」

未来へと進むための「一歩先の薬局経営」を行えていますか?

2022年8月10日公開

これまで5回にわたり「一歩先の薬局経営」をテーマに「データの活用」について考えてきました。簡単に振り返ると「新型コロナウイルスの影響」をデータで確認することから始まりました。次いでその影響を確認するために「薬局の売上を因数分解」をしました。その因数分解から特に注目すべきKPIとして「患者数」を取り上げ、そのKPIを増加させるために「対人業務の充実」について考えてきました。6回目となる今回は本テーマの最終回です。

目次

新型コロナウイルスの流行による薬局の影響

新型コロナウイルスによる処方箋枚数への影響

テレビニュースや学会など、様々な媒体で薬局における直近の処方箋受付回数が前年に比べて回復していることを目にします。前年と比べて処方箋受付回数が増加していることは良いことですね。新型コロナウイルスの流行前と比較するために前年だけではなく、更に前々年と比較することで現状を正確に把握できるのではないでしょうか。特に第1波の2020年4月〜5月の処方箋受付回数の落ち込みは薬局にとって大きな影響がありました。その大きな要因は、小児における急性処方の減少でした。当時から現在(2022年8月)の第7波に至るまで小児における急性処方は徐々に回復してはいるものの新型コロナウイルス流行前までの回復は約9割です。完全に回復しているわけではありません。

*データは新型コロナウイルス流行前と比較するため第1波(2020年1月〜6月)直前の3ヶ月(2019年10月〜12月)を対象に各年(2020年、2021年)の同期間(10月〜12月)を比較しています
*データとその定義は(株)プレサスキューブのBHI統計データを利用しています

そのうち起こる変化が一気に加速

新型コロナウイルスの流行による薬局の影響として特徴的な2つの事象、小児における急性処方の減少、在宅処方の増加を以前取り上げました。在宅処方の増加は、これまでに外来と在宅医療の中間あたりの患者さんが今回のライフスタイルの変化を機に在宅医療を選択された結果だと言われています。日本の人口動態の現状を表す「少子化と高齢化」を考えたとき、これらは新型コロナウイルスが流行しなくても「そのうち起こる変化が一気に加速」したと言える事例ではないでしょうか。

薬局のデジタル活用

このような変化にみなさんの薬局はどのように対応したでしょうか。小児における急性処方の減少については、スマートフォンのアプリ等を活用した「処方箋送信」が効果的でした。新型コロナウイルスの流行によりデジタル化が進んだこともあり、「処方箋送信」の利用は新型コロナウイルス流行前の約3.5倍に増加しています。特に直近で大きく伸びており、新たにアプリ等の導入をすすめる薬局が増加したことも一つの要因だと考えられます。この「処方箋送信」を特に多く利用したのは小児における急性処方であり、新型コロナウイルスの流行により減少した小児における急性処方に対する施策として効果があったのでないでしょうか。

*データは新型コロナウイルス流行前と比較するため第1波(2020年1月〜6月)直前の3ヶ月(2019年10月〜12月)を対象に各年(2020年、2021年)の同期間(10月〜12月)を比較しています
*データとその定義は(株)プレサスキューブのBHI統計データを利用しています

デジタルを活用したベストプラクティス

このようにデジタルを活用した薬局のベストプラクティスを目にする機会が増えてきました。いくつか取り上げます。

・小児のお薬を管理するお母さんによる処方箋送信が増加
・新規患者が処方箋送信機能を利用して増加
・高齢者のオンライン服薬フォローの返信率が高い
・オンライン服薬フォローを実施した患者さんのリピート率が高い

これらは仮説を持ってデジタルを活用した取組みをすすめた結果をデータで検証したからこそ確認することができた事実で、このようなベストプラクティスを社内に展開していくことが重要です。このサイクルが早いほどデジタルを導入した効果を大きく享受することができます。

これからの薬局におけるデジタル活用

これから薬局を取り巻く環境はリフィル処方箋、オンライン服薬指導、オンライン資格確認、電子処方箋、調剤業務の外部委託など大きく変化しようとしています。それぞれがいつ、どれくらい利用されるのか予想することは難しいですが、それぞれが単独で推進されるというより、デジタルの組合せで社会に浸透してくのではないでしょうか。

例えば、オンライン資格確認と電子処方箋を利用した患者さんに対してオンライン服薬指導が実施され、調剤された医薬品が郵送で患者さんの自宅に届き、服薬状況をオンラインで継続して確認するというような組合せが予想されます。これまで患者さんは処方箋を持って薬局に来店され、薬剤師が調剤している間に待合室で待つということが一般的でしたが、薬局に来店することなく医薬品を受け取る患者さんが増加する可能性があります。

患者さんのニーズは変わるか?

そのような変化と合わせて患者さんに提供する付加価値も変わっていくのではないでしょうか。これまでは「待ち時間を短くする」ことが患者さんの薬局に対する最も大きなニーズの1つと言われてきました。デジタルの活用が進むと処方箋は薬局に送信され、薬局で調剤を待つことなくオンライン等でお薬の説明を受けることができるため、「待ち時間に対するニーズ」は満たされやすくなります。患者さんに提供する付加価値を改めて考える機会になるかもしれません。

薬局におけるカスタマーサクセス

それでは患者さんに提供する付加価値はどのようなものに変化していくのでしょうか。私たちの生活の周辺にヒントがあるかもしれません。最近、デジタルを活用した付加価値の提供として「カスタマーサクセス」の存在感が増しています。「カスタマーサクセス」は直訳すると「顧客の成功」という意味です。サービス提供者が能動的に顧客の問題や課題の解決を働きかけ、顧客がサービスを通じて目的を達成することを支援するサービスです。これまでは、いかにサービスを購入いただくかを重視した企業の活動が、顧客の「購入後の体験」にシフトしていると言われます。

同じように薬局においても「購入後の体験」を患者さんが求める価値とした場合、薬局は何を価値として提供できるでしょうか。例えば、服薬フォローアップも「カスタマーサクセス」として、一人ひとりの患者さんに合わせた「お薬の服用後の体験」として価値を提供できる薬局がこれから支持を受けていくのではないでしょうか。

薬局のDX

このようにデジタルの活用が進み、患者さんに提供する付加価値が変わっていくと薬局のオペレーション(処方箋の応需、処方情報の入力、調剤、服薬指導、会計などの方法やタイミング)も変えていく必要があります。これまでは、ほとんどの薬局は、ほぼ同様のオペレーションで処方箋の応需〜服薬指導や会計まで実施されていました。これを積極的にトライ&エラーを繰返しながら「カスタマーサクセス」を実現する薬局が出てくるのではないでしょうか。

この一連の動きは経産省がとりまとめたDXの定義「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」そのものです。さまざまな規制の緩和やデジタル活用の基盤が整ってきている今、薬局はDXを推進する環境が整ってきていると言えます。

一歩先の薬局経営

これまで仮説に対する取組みの効果をデータで検証し、社内外のベストプラクティスから継続的に学習していくサイクルを一歩先の薬局経営とお伝えしてきました。それは言い換えると「薬局におけるDXを自ら進めていくこと」です。

今後も様々な方と薬局の取組みの検証結果についてデータを活用した意見交換やシェアができる機会に遭遇できればと思います。これまで計6回にわたり記事を担当する機会をいただきありがとうございました。

執筆者プロフィール

金指 伴哉

薬樹HD株式会社 執行役員
株式会社プレサスキューブ 取締役

2001年 東京薬科大学を卒業後、薬樹株式会社入社
2012年〜2020年 薬樹健ナビ株式会社 代表取締役
2016年〜現在    株式会社プレサスキューブ 取締役
2018年~現在    薬樹HD株式会社 執行役員

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