みなさまの業務に直結する特例措置から、
今後報酬改定の流れについて考えていきます。
2023年3月1日公開
今回は「医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置」について対人業務の視点から考えていきます。
令和4年12月23日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第535回)で医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の特例措置について答申がありました。
診療報酬上の特例措置として、診療報酬は一般名処方加算・後発医薬品使用体制加算・外来後発医薬品使用体制加算、調剤報酬は「地域支援体制加算」を23年4月から12月までの9か月間、点数を上乗せするものです。
〇医薬品の供給が不安定な状況を踏まえ、患者への適正な薬剤処方や、保険薬局の地域における協力促進などの観点から、保険医療機関・保険薬局に対する加算について、特例措置を講ずる。
〇この特例措置は、令和5年4月から12月まで(9か月間)時限的に適応する。
薬局に対しては地域支援体制加算について、後発医薬品調剤体制加算を算定している薬局の点数が1点又は3点上乗せになります。
後発医薬品調剤体制加算3(90%以上)を算定している場合は地域支援体制加算1〜4が+3点、後発医薬品調剤体制加算2(85%以上)もしくは後発医薬品調剤体制加算1(80%以上)を算定している場合は地域支援体制加算1〜4が+1点引き上げになります。(下図)
後発医薬品調剤体制加算3は30点ですので、基本料1で地域支援体制加算2(50点=47+3)を既に算定している薬局では、この2つの加算で合計80点を算定できることになります。全ての受付回数に80点が加算されることは経営インパクトとして大きいです。例えば月に1,000回の受付回数がある薬局では、80万円/月を粗利として恩恵を受けることができます。
また、追加の施設基準も提示されていますので以下を合わせて確認してください。
(1)地域支援体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること
(2)後発医薬品調剤体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること
(3)地域の保険医療機関・同一グループではない保険薬局に対する在庫状況の共有、医薬品融通などを行っていること
(4)(3)に係る取組を実施していることについて当該薬局の見やすい場所に掲示していること
今回の特例措置は医薬品という「モノ」を扱う全ての薬局を対象にしているのではなく、患者さんや地域の近隣薬局とのコミュニケーションの実績として「地域支援体制加算」を施設基準としたことがポイントではないでしょうか。主に「対人業務」を評価する「地域支援体制加算」を施設基準としていることからも「患者のための薬局ビジョン」策定以降、薬局の評価は「対物業務から対人業務へ」シフトする流れがここにも反映されています。
この流れは2025年調剤報酬改定も変わらないと想定します。また、その中でも「地域支援体制加算」が重要であることを改めて実感しましたね。
前回(2022年)の調剤報酬改定以降、「地域支援体制加算」の算定要件を中心とした取組みやマネジメントについて私は相談を受ける機会が増えています。その際には算定要件を達成することを目的にするのではなく、目指す薬局像へ推進した結果、「地域支援体制加算」の算定要件に達する形を理想とすることを提案しています。
また、算定要件に達した後も取組みを推進し続けることをおすすめしています。調剤報酬改定に合わせて都度、算定要件に取組むというよりは、今回の特例措置のように既に実施していることに後から評価がついてくることが一歩先の薬局経営といえるのではないでしょうか。
金指 伴哉
薬樹HD株式会社 執行役員
株式会社プレサスキューブ 取締役
2001年 東京薬科大学を卒業後、薬樹株式会社入社
2012年〜2020年 薬樹健ナビ株式会社 代表取締役
2016年〜現在 株式会社プレサスキューブ 取締役
2018年~現在 薬樹HD株式会社 執行役員
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