なぜ今、薬局に在宅訪問業務が必要なのか
―2026年、薬局経営を左右する3つの理由―

「在宅は人手がないと無理」と思っていませんか?調剤報酬改定の流れと地域医療の現場が示す、在宅参入が「必須」となった背景と、今すぐ動き出すべき理由を解説します。

2026年1月21日公開

「在宅訪問業務が必要だとは思うけれど、1〜2名しかいない小規模薬局では、訪問に出ると薬局が閉局してしまう。24時間対応なんて、到底無理だ。」そう考えて、在宅参入を見送っている薬局経営者の方は少なくありません。

しかし、2024年調剤報酬改定を経て、在宅訪問業務への参入は「余裕のある薬局がやること」ではなく、薬局が地域で生き残るための必須戦略であることが、より鮮明になりました。そして2026年の調剤報酬改定でも、この流れは引き続き強化されることが予想されます。

本記事では、なぜ今、薬局に在宅訪問業務が必要なのかを、国の政策方針、調剤報酬改定の流れ、地域からの期待の3つの視点から解説します。この記事を読めば、「人手不足でもICTを活用すれば在宅参入は可能」という希望が見えてきます。

1. 2025年問題が「現実」になった今―在宅医療ニーズの急増と薬局への期待―

1-1. 団塊世代の後期高齢化で在宅医療の需要が急増中

2025年、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となったことで、在宅医療の需要は現実に急増しています。厚生労働省の推計によれば、2040年頃には85歳以上の在宅医療の需要は2020年比で62%増加する見通しです。

地域医療構想でも「増加する在宅医療需要への対応」が掲げられており、医療費抑制の観点からも、病院から在宅へのシフトが国の基本方針となっています。この流れは今後も加速し、薬局には在宅医療の担い手としての役割が一層期待されています。

1-2.「自宅で最期を迎えたい」というニーズの高まり

患者・家族の価値観も変化しています。内閣府の調査によれば、「万一、治る見込みがない病気になった場合、自宅で最期を迎えたい」と考える人の割合は45.8%(2023年時点)に上ります。かつては病院での看取りが一般的でしたが、住み慣れた自宅で最期を過ごしたいという希望が増えているのです。

地域包括ケアシステムにおいて、薬局は「医薬品供給拠点」だけでなく「在宅医療の担い手」として期待されています。訪問診療や訪問看護の充実に伴い、薬局への在宅訪問の依頼も増加傾向にあります。

1-3. 高まる在宅訪問へのニーズと、薬局への期待

在宅医療のニーズが急増する一方で、医療機関やケアマネジャーからは「在宅訪問に対応できる薬局を見つけるのが難しい」という声が聞かれます。訪問診療や訪問看護の体制は充実してきたものの、薬剤師による在宅訪問が追いついていない地域が少なくありません。

地域包括ケアシステムにおいて、患者が安心して在宅療養を続けるには、医師・看護師に加えて薬剤師による専門的な薬学管理が不可欠です。人手不足や24時間対応への不安が在宅参入の障壁となっている薬局も多いですが、裏を返せば、今から在宅訪問に対応すれば、地域で頼られる存在になれるチャンスでもあります。

2. 調剤報酬改定が示す「在宅参入は必須」という国の方針―2024年改定を振り返り、2026年を見据える―

2-1. 2024年調剤報酬改定で明確になった「在宅推進」の方針

2024年調剤報酬改定では、在宅医療への参画を促進する方向性が明確に示されました。

2024年調剤報酬改定の主なポイント
  • 対物業務から対人業務へのシフト強化
  • 地域包括ケアシステムへの貢献を評価する仕組み
  • 薬局機能情報提供制度の見直し(在宅対応の有無が可視化)

薬局の役割は「薬を渡す場所」から「地域医療を支える拠点」へと変化しています。

2-2. 地域支援体制加算の要件厳格化―在宅訪問実績が「必須」に―

2024年調剤報酬改定で最も大きな変化の一つが、地域支援体制加算の要件厳格化です。在宅薬剤管理の実績年間24回以上が必須要件となり、在宅訪問に取り組まなければ、地域支援体制加算すら算定できなくなりました。

地域支援体制加算は薬局経営において重要な収益項目であり、算定できないと経営に大きな影響が出ます。この要件厳格化は、国が「在宅訪問は特別な薬局だけがやるものではなく、すべての薬局が取り組むべきもの」というメッセージを発している表れです。

2-3. 在宅薬学総合体制加算の新設―在宅体制の整備を包括的に評価―

在宅薬学総合体制加算(15点・50点)の新設により、在宅訪問の体制整備が包括的に評価されるようになりました。

在宅医療関連の新設・見直し加算
  • 在宅薬学総合体制加算(15点・50点):在宅体制の整備を評価
  • 在宅移行初期管理料(230点):在宅医療へ移行する初期段階での在宅業務を評価
  • 在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算(250点):医療用麻薬持続注射療法への対応を評価

従来の「在宅患者調剤加算」から刷新され、在宅体制を整えた薬局が適切に評価される仕組みが構築されています。

2-4. 2026年改定でもこの流れは継続される見通し

2026年調剤報酬改定の具体的な内容はまだ明らかになっていませんが、「在宅訪問に取り組む薬局を手厚く評価し、取り組まない薬局への報酬を見直す」という方向性は確実視されています。在宅訪問に取り組まない薬局への評価は今後さらに厳しくなる可能性があります。

3. 地域医療の現場が薬局に求める在宅訪問業務への参画

3-1. 医療機関からの期待―「在宅チームの一員」としての薬剤師―

訪問診療を行う医療機関にとって、薬剤師は欠かせない在宅医療チームの一員です。医師や看護師だけでは対応しきれない薬学的な課題が、在宅医療の現場には数多く存在します。

医療機関が薬局に期待する役割
  • 複数の医療機関から処方された薬の重複・相互作用のチェック
  • 残薬管理による服薬アドヒアランスの向上
  • 副作用の早期発見と医師へのフィードバック
  • 医療用麻薬など特殊な薬剤の適切な管理・指導
  • 患者・家族の服薬に関する不安の解消

訪問診療クリニックの多くは「在宅対応できる薬局」との連携を強く求めており、地域ケア会議や退院時カンファレンスでは、薬剤師の参加が当然のこととして期待されています。在宅訪問に対応できない薬局は、医療機関との連携機会を失い、結果として処方箋応需のチャンスそのものが減少する可能性があります。

3-2. ケアマネジャーからの期待―「生活を支える」専門職として―

介護保険のケアプランを作成するケアマネジャーにとって、薬剤師は利用者の生活を支える重要な専門職です。特に在宅療養中の高齢者は複数の疾患を抱え、多剤併用による問題が起きやすい状況にあります。

ケアマネジャーが薬局に期待する支援
  • 服薬管理が困難な利用者への訪問指導

  • 飲み忘れ・飲み間違いの防止策の提案
  • 薬の副作用によるADL(日常生活動作)低下の早期発見
  • 介護スタッフへの服薬介助方法のアドバイス
  • 医師への処方提案(剤形変更、減薬など)

地域包括ケアシステムにおいて、ケアマネジャーは「在宅対応できる薬局」を優先的に紹介します。サービス担当者会議への参加や、日常的な情報共有を通じて、薬局は地域の介護事業者との信頼関係を構築できます。

3-3. 地域包括支援センター・行政からの期待―地域の「社会資源」として―

地域包括支援センターや自治体の介護・医療担当部署は、地域に「在宅対応できる薬局」が存在することを強く求めています。

地域包括ケアシステムにおける薬局の位置づけ
  • 地域の医療・介護資源マップに「在宅対応薬局」として掲載

  • 地域ケア会議への参加による多職種連携の推進
  • 地域住民向けの健康相談・啓発活動の実施
  • 災害時の医薬品供給拠点としての役割

地域連携薬局の認定要件にも「在宅医療への対応」が含まれており、行政は薬局に対して地域包括ケアシステムの一翼を担うことを期待しています。在宅訪問に対応できる薬局は、地域にとってなくてはならない「社会資源」として認識され、地域からの信頼と評価を獲得できます。

4. まとめ:在宅訪問業務は「いつ始めるか」の問題である

2025年問題が現実化し、在宅医療のニーズは急増しています。2024年調剤報酬改定で「在宅参入は必須」という国の方針が明確になり、2026年調剤報酬改定でもこの流れは継続される見通しです。

支援体制加算の要件厳格化により、在宅訪問に取り組まなければ経営が成り立たない時代に突入しました。同時に、地域医療の現場では「在宅対応できる薬局」への期待が高まっており、今から参入すれば地域で頼られる存在になれるチャンスでもあります。

在宅訪問業務は、もはや「やるか・やらないか」ではなく「いつ始めるか」の問題です。今この瞬間から準備を始めた薬局が、3年後には「地域になくてはならない薬局」として選ばれ続ける存在になるのです。

  • 参考文献

この記事の筆者

大学卒業後、薬剤師として薬局に8年間勤務。管理薬剤師として現場のマネジメントも経験する。その後、地方自治体へ転職し、公務員薬剤師として薬事行政業務に携わる。

現在は薬剤師ライターとして、薬局業務に関する情報をお届けしています。薬局での現場経験と、行政側から薬局を見てきた経験という二つの視点を活かし、制度解説から経営改善、さらには日々の業務効率化やスキルアップまで、薬局の実務に直結する情報をわかりやすく伝えることを大切にしています。

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