「自分の薬局にはまだ早い」と思っていませんか?現場の薬剤師が語るAIへの本音と、導入薬局と非導入薬局の間に生じている“現実の差”を解説します。
2026年3月18日公開
「AI活用はまだ自分の薬局には早い」と感じている薬局経営者は多いのではないでしょうか。しかし、現場の薬剤師は、すでにAIに大きな期待と関心を寄せています。
株式会社ソラミチシステムが2026年1月に公表した「薬剤師の業務実態に関する調査」では、20代~60代の薬剤師1,058名を対象にAI活用の実態を調査しました。その結果は、薬局経営の重要な転換点を示すものでした。
本記事では、この調査データをもとに、薬局現場でのAI活用の現状と課題、そして経営者として今取るべきアクションを解説します。
この記事を読めば、AI導入を「経費」ではなく「投資」として判断するための視点が得られます。今行動するかどうかが、3年後の薬局の競争力を左右するといっても過言ではありません。
(出典:株式会社ソラミチシステム「薬剤師の業務実態に関する調査」2026年1月公表)
調査によると、すでに薬局でAIを導入している割合は51.4%と、全体の半数を超えました。
薬局業界は保守的な印象を持たれることも多いですが、この数字は「AI活用が特別な取り組みではなくなった」現実を示しています。

AI活用への関心については、回答した薬剤師の81.2%が「関心あり」と答えました。
注目すべきは年代別のデータです。「IT活用は若い世代のもの」と思われがちですが、最も関心が高かったのは50~59歳で84.0%でした。

つまり、現場スタッフの年代を理由に「AI導入は難しい」と判断することは、実態に即しているとは言えません。現場の薬剤師自身がAIを求めているのです。
調査では、時間不足を感じる業務として以下が上位に挙がりました。

特に注目したいのが「服薬指導や患者対応」です。服薬指導は、今後の薬局においてさらに重要性が高まる対人業務の一つです。加算取得や患者との信頼関係の構築など、薬局経営の収益性と信頼性を左右する重要な業務でもあります。しかし、その重要な業務でさえ十分な時間を確保できていない薬剤師が少なくないという現実は、経営者として見過ごせない課題です。
調査では、患者一人あたりの服薬指導の時間が「理想より短い」と感じている薬剤師が31.9%に上りました。


上のグラフのとおり、時間不足によって実際に起きている問題は多岐にわたります。
その中でも「患者の悩みが聞き出せない」という課題は、患者満足度の低下に直結します。「加算要件が満たせない」は、そのまま機会損失(収益の取りこぼし)を意味します。
多くの経営者は「服薬指導の質が低いのは薬剤師個人の問題」と考えがちです。しかし本質的な問題は、記録業務などの事務作業に時間を取られ、患者と向き合う時間を確保できない「業務構造」にあると見るべきです。
まず全体として、自身が行う服薬指導に満足していない薬剤師が約30%いることが調査で明らかになりました。


その主な理由は、グラフのとおりです。上位2項目には「患者とのコミュニケーションが難しい」と「業務量が多く服薬指導に十分な時間を割けない」が並びます。
つまり、不満の根本には「患者と十分に向き合えない」という課題があることが分かります。では、AIを導入することでこの課題は解消されるのでしょうか。
調査の中で最も注目すべきデータが、AI導入の有無による服薬指導への満足度の差です。

グラフのとおり、AI導入薬局では服薬指導への満足度が80.3%に達しているのに対し、非導入薬局では59.0%にとどまっており、21.3ポイントという大きな差があります。
この差は、AI導入が記録業務の負担を軽減し、薬剤師が患者と向き合う時間と心理的余裕を生み出していることを示しています。
お勤めの薬局でAIを「導入している」と回答した人に、具体的にどのような業務で活用しているかを尋ねた結果はグラフのとおりです。

患者対応・在庫・記録という薬局の中核業務のすべてにわたってAIが使われており、AIの活用範囲が想像以上に広いことがわかります。
AI導入が進まない薬局の理由として、以下が挙げられました。

これらの懸念は「もっともな心配」です。しかし、見方を変える必要があります。
「導入コストへの懸念」は自然な感覚です。しかし、本調査の結果から、AI非導入薬局では薬剤師自身が行う服薬指導の満足度が21ポイント低いことが分かります。
服薬指導の満足度は、次の連鎖を生み出します。
服薬指導の質の向上 → 患者の継続利用の増加 → 処方箋枚数の増加 → 収益の向上
さらに、服薬指導に十分な時間をかけられず、患者の悩みを聞き出せないと、薬歴に記載すべき内容も不足しがちです。その結果「加算要件が満たせない」という機会損失が生じています。AIへの投資は、この機会損失を回収するためのコストと捉えることができます。
この調査結果を踏まえ、薬局経営者として今すぐ着手すべき3つのアクションを提案します。
アクション①:現場の「時間の使われ方」を可視化する
まず、スタッフがどの業務にどれだけ時間を使っているかを把握することが出発点です。「薬歴作成」「在庫確認」など、AI代替可能な業務の比重を確認してください。
アクション②:薬局業務で使えるAIツールを調べる
「AI」といっても、薬歴作成の音声入力支援、在庫管理の自動化、処方箋入力のサポートなど、薬局業務に対応したツールは複数あります。まず自薬局の課題に近いものから情報収集することが、導入の第一歩になります。

『CARADA電子薬歴Solamichi』のAI音声入力機能では、患者との会話を自動で要約して薬歴に反映することができます。記録業務の負担軽減に関心のある方は、こちらをご確認ください。
アクション③:スタッフを巻き込んで検討する
調査では薬剤師の81.2%がAI活用に関心を持っています。経営者だけで導入を決めるのではなく、現場スタッフに「どんな業務で困っているか」を聞くことが、導入成功の鍵になります。
今回の調査で明らかになったポイントを整理します。
「AI活用はまだ早い」という判断は、結果として競争力の低下につながる可能性があります。
他の薬局がAIで業務効率を高め、薬剤師が患者対応に集中できる環境を整える中、動き出さないことの機会損失は年々大きくなります。
最初の一歩は、小さな改善で構いません。現場の薬剤師が「もっと患者と向き合いたい」という思いを持っている今こそ、経営者としてその環境を整える絶好のタイミングです。
出典:株式会社ソラミチシステム「薬剤師の業務実態に関する調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000077012.html
<調査概要>
・調査期間:2025年9月29日(月)~2025年10月3日(金)
・調査対象者:20代~60代の薬剤師
・調査方法:インターネット調査(PRIZMA)
・有効回答数:1,058名
この記事の筆者

大学卒業後、薬剤師として薬局に8年間勤務。管理薬剤師として現場のマネジメントも経験する。その後、地方自治体へ転職し、公務員薬剤師として薬事行政業務に携わる。
現在は薬剤師ライターとして、薬局業務に関する情報をお届けしています。薬局での現場経験と、行政側から薬局を見てきた経験という二つの視点を活かし、制度解説から経営改善、さらには日々の業務効率化やスキルアップまで、薬局の実務に直結する情報をわかりやすく伝えることを大切にしています。