今日の患者さんの人数は、処方箋枚数と一緒?
2022年4月13日公開
これまでに当記事において一歩先の薬局経営として「新型コロナウイルスの影響」や「売上の因数分解」などデータの活用を取り上げてきました。今回はそのデータの活用のなかで特に注目したいKPIとして「患者数」を考えていきます。皆さんのなかで先月に薬局を利用した「患者さんの人数」が分かる方は少ないのではないでしょうか。一方で先月の処方箋枚数や受付回数は即答できる方はいるのではないでしょうか。
※KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標
保険薬局のKPIについては、お役立ち記事「売上を因数分解して薬局の未来を考える」にて詳しく説明しています。
前回、保険薬局の売上をKGIとしてKPIツリーを取り上げました。そのKPIのなかで薬局経営に関わる皆さんに日々活用されるKPIは「処方箋枚数」や「受付回数」ではないでしょうか。「受付回数」は調剤基本料の算定要件になりますので薬局の規模や実績を把握する上で分かりやすいKPIといえます。今回はそこから深掘りして処方箋枚数や受付回数を構成する「患者数」について考えていきます。
「患者数」は薬局を利用された患者さんの人数です。「患者数」は延べ人数ではなく同一人物は1と数えた人数(ユニーク人数)です。「処方箋の受付回数」は様々な患者さん一人ひとりが利用した回数の積み重ねです。計算式にすると「受付回数=患者数×来店頻度」です。例えば、1人の患者さんが一定期間に薬局を5回利用された場合「患者数は1人」「来店頻度は5回」と考えます。
受付回数の変化は「患者数」や「来店頻度」の変化によるものです。もし、前年と比較して受付回数が増加している場合、それは「患者数」か「来店頻度」が増加したことが要因です。もちろん、どちらも増加しているのが理想です。皆さんも、薬局近隣の地域の生活者に「かかりつけ薬局」としてご利用いただき、継続的に「患者数」が増加しながらも一人ひとりの患者さんの複数医療機関におけるお薬の一元化が進むことで「来店頻度」も増加することを理想としているのではないでしょうか。
では、薬局において「患者数が増加する」とはどのようなことなのか考えていきましょう。
今回は①「新規の患者さんが増加する」、②「既存の患者さんが増加する」の2つのパターンに整理します。
①「新規の患者さんが増加する」
「新規の患者さんが増加する」は薬局が新規開業した時や近隣に医療機関が開業した時などに多いのではないでしょうか。広告に制限があるなかで、薬局の努力というより外部要因に影響を受けやすく、開業してから数年が経過した後にも継続的に新規の患者数が増加を続けることは一般的には難しいと想定します。どこかのタイミングで新規の患者数はある程度一定になるのではないでしょうか。ただし今後、規制の緩和やITの活用などでこの状況に変化が生じる可能性があります。
②「既存の患者さんが増加する」
「既存の患者さんが増加する」は新規で薬局を利用した患者さんが継続して薬局を利用しているということです。①よりも薬局が自らの努力によって変えることができるKPIではないでしょうか。患者さんが継続して同じ薬局の利用を継続している状態を本記事では「患者さんの継続率が高い」と表現します。この患者さんの継続率について深掘りしていきましょう。
患者さんの継続率に着目したさまざまな取組みを目にする機会があります。以前は患者さんが指示通りに継続して医薬品を服用することをコンプライアンスと表現しましたが、最近ではアドヒアランス、続いてコンコーダンスと表現に変化が生じています。いずれも患者さんと薬局との関係の考え方の変化と捉えることができます。
実際に患者さんの継続率を確認してみましょう。現状を把握するにはデータを活用することが重要です。ここでは新規の患者さんにおける薬局の利用回数別の継続率を確認しています。今回は高血圧に関する処方で薬局を新規に利用した患者さんを対象にしています。
データから確認できることは特に「初回(1回→2回)の継続率が低い」ということです。様々な要因(逆紹介等)があると想定されますが、高血圧に関する処方で薬局を新規に利用した患者さんのうち約30%が次回の来店がないということです。薬局を変更しているケースがあるかもしれませんが、生活習慣病などの慢性疾患のお薬を初めて服用する患者さんが自己判断で服用をやめてしまうケースに遭遇した経験が皆さんもあるのではないでしょうか。
この慢性疾患における初回の「継続率」を改善することができれば、「患者数」の増加につながります。継続して患者数が蓄積(ストック)されていきますので、長期間でその効果を考えると大きな影響があります。「継続率が高い」状態はよく金利など利用される「複利」の効果をイメージいただくと良いです。
*データは全て (株)プレサスキューブが運営するBHI統計データを使用
上述したデータより薬局において「患者数」の増加には慢性疾患における「初回の継続率の改善」がポイントの1つだと確認できました。そうしたら何か対策を検討していきましょう。
例えば、令和4年度の診療報酬改定において新設された「服薬管理指導料」と合わせて検討してはいかがでしょうか。
服薬管理指導料は要件に「処方された薬剤について、保険薬剤師が必要と認める場合は、患者の薬剤の使用の状況等を継続的かつ的確に把握するとともに、必要な指導等を実施すること」とあるように、来局時の情報収集だけではなく服薬フォローアップ等を通じた日常からの接点が求められます。
【仮説】
慢性疾患新規の患者さんに「服薬フォローアップ」を通じてお薬の継続を支援できるのではないか
【施策】
慢性疾患新規の患者さんに「服薬フォローアップ」を実施、お薬の服用や体調変化の確認、お薬を継続する重要性を説明、次回の薬局利用予定日を確認して来店を促す
【提案方法】
服薬指導時に「服薬フォローアップ」を、電話やSNSなど患者さんのニーズに合わせた方法で提案
【検証内容】
「服薬フォローアップ」を実施した患者さんの継続率を確認、過去の同条件の患者さんの継続率と比較
上記を検証するには「服薬フォローアップ」を実施した患者さんの特定や「患者さんの継続率」を確認する仕組みも併せて検討する必要があります。このような仕組みには是非ITの活用を検討したいところです。
今回はKPIのなかから「患者数」に注目しました。その「患者数」を改善するポイントの1つとして「慢性疾患における初回の継続率」に課題があることを取り上げました。また、このような取組みをデータで検証する際のポイントとして「患者さんの継続率が高い薬局や薬剤師さん」を特定できると、ベストプラクティスを発見するヒントにもなります。そのベストプラクティスを他の薬剤師さんにも共有できると良いですね。
「患者数」や「継続率」を把握することでこれまでと異なる視点から様々な仮説が見出せるのではないでしょうか。その仮説に対する取組みの効果をデータで検証するサイクルや社内のベストプラクティスから継続的に学習していくことが一歩先の薬局経営といえます。
金指 伴哉
薬樹HD株式会社 執行役員
株式会社プレサスキューブ 取締役
2001年 東京薬科大学を卒業後、薬樹株式会社入社
2012年〜2020年 薬樹健ナビ株式会社 代表取締役
2016年〜現在 株式会社プレサスキューブ 取締役
2018年~現在 薬樹HD株式会社 執行役員
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2022年調剤報酬改定で、服薬管理指導料の算定要件として服薬フォローが明記されました。
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