「患者数」に隠れた経営のヒントを徹底解説。新規とリピートを両輪にした処方箋枚数アップの実践法を紹介します。
2025年10月22日公開
前回の記事「【一歩先の薬局経営】売上改善の第一歩は『見える化』から!利益を伸ばす5つの実践ステップ」では、売上改善の土台となる「見える化」について解説しました。売上を「処方箋受付回数×処方箋単価」に分解し、KPIを設定して改善サイクルを回す重要性をお伝えしましたが、実際に処方箋受付回数を増やすには、どのような戦略が効果的なのでしょうか?
この記事では、前回学んだ分析方法を活用しながら、新規患者獲得とリピート促進の具体的な取り組みを紹介します。患者数の動きを正しく捉え、改善の方向性を見極めることで、継続的な成長を実現しましょう。
「今月は処方箋枚数が前年同月比で5%増加した!」—このような報告を聞いて安心していませんか?実は、処方箋枚数や受付回数だけを追っていても、薬局の実際の姿は見えてきません。
なぜなら、同じ処方箋枚数でも、その中にある患者数の動きによって、薬局の未来は大きく変わるからです。
処方箋枚数1,000枚といっても、その内訳によって経営状況は大きく異なります。
A薬局:処方箋枚数1,000枚/月 → 患者数500人(1人あたり月2回来局)
B薬局:処方箋枚数1,000枚/月 → 患者数200人(1人あたり月5回来局)
一見同じ1,000枚でも、A薬局は多くの患者に選ばれているのに対し、B薬局は少数の患者に強く依存しています。そのためB薬局は、患者の転居や病状の変化で経営が大きく揺らぐリスクを抱えているのです。
処方箋枚数だけでは、薬局の強みや課題を正確に把握することはできません。経営の安定と成長を目指すなら、次に紹介する「患者数」の概念を押さえておく必要があります。
売上を正しく分析するには、「のべ患者数」と「ユニーク患者数」を区別することが大切です。
のべ患者数:来局回数の合計(処方箋枚数とほぼ同義)
特に注目すべきは「ユニーク患者数」です。たとえば、のべ患者数が前年同月と同じでも、ユニーク患者数が減っているなら、患者が少しずつ離れているサインかもしれません。
ユニーク患者数が多い薬局は、リスクが分散されているので、一部の患者が離れても売上への影響は限定的です。逆に、少数の患者に頼る薬局は、主要患者が転居しただけで売上が急減する危険を抱えています。
ユニーク患者数の推移を追えば、経営のリスクや成長が見えてきます。次章では新規患者と既存患者のリピートに分けて具体的な取り組みを見ていきましょう。
処方箋枚数を増やすには、「新規患者の獲得」 と 「既存患者のリピート促進」 の両方を考える必要があります。
新規患者を獲得するには、地域での認知度と信頼度を高めることが欠かせません。
取り組みの例
地域医療機関との連携、在宅医療や地域包括ケアへの参画
こうした取り組みを重ねることで、「あの薬局なら安心できそうだ」と思ってもらえるようになり、新規患者が自然と増えていきます。
既存患者のリピート率を高めることは、新規獲得よりもコスト効率が良く、経営改善の効果が大きい取り組みです。
取り組みの例
服薬フォローアップ(電話やLINEでの継続確認、副作用モニタリング)
こうした工夫を積み重ねれば、「やっぱりこの薬局に通いたい」と患者に感じてもらえるようになります。

「CARADA 電子薬歴 Solamichi」では、新規患者と既存患者の受付回数を表示することができます。
患者数を増やす方法は、薬局の規模や立地、近隣医療機関の特徴によって変わります。だからこそ、自分の薬局に合った形で取り組みをカスタマイズすることが成功のカギです。
中小規模薬局は柔軟性と個別対応力を活かして患者満足度を高めることができます。一方で大規模薬局は、組織力を背景にサービスを標準化し効率的に運営することが求められます。
中小規模薬局の成功パターン
大規模薬局の成功パターン
都市部では競合が多く、差別化と利便性の強化が欠かせません。郊外では家族層を意識した総合的なサポートが有効です。また、地方では地域に根ざした信頼関係と、限られた医療資源をどう活用するかがカギになります。
都市部薬局の戦略
郊外薬局の戦略
子育て世帯・高齢者向けサービスの充実(介護用品販売など)
地方薬局の戦略
診療科目によって患者の特性は異なります。内科では継続的な服薬管理が中心になります。小児科では保護者の不安に寄り添う説明が欠かせません。整形外科では外用薬の正しい使用指導やリハビリ支援が大切です。
内科系クリニック隣接薬局
血糖値や血圧の記録管理:お薬手帳に測定値記録欄を設置
小児科クリニック隣接薬局
子供向けの環境整備:待ち時間を過ごしやすい待合室
整形外科クリニック隣接薬局
外用薬使用法の実演:湿布の貼り方、軟膏の塗り方を具体的に指導
前回の記事で学んだ「分析→計画→実行→検証」のサイクルを、患者数増加の取り組みにも応用してみましょう。「データはあるけれど改善に結びつかない…」そんな悩みを解消するカギが、この仕組みです。
以下のデータを月次で収集します。
データを分析することで、このような傾向が浮かび上がります。
目標と施策を設定する
分析結果をもとに、具体的な改善目標を立てましょう。
目標に対して、誰がいつまでに何をやるかを明確にすることが大切です。
実際に行動する
決めた施策を実行に移し、同時に状況を記録していきます。
たとえば「患者への声かけを増やす」という取り組みであれば、「どんな声かけをしたか」「患者はどう反応したか」を記録しておくことが次につながります。
効果を振り返る
設定した目標の達成度を確認し、次のように評価します。
「患者にお礼を言われることが増えた」「スタッフの雰囲気が良くなった」など、数値に表れない成果への評価も大切です。
次に活かす
振り返りの結果をもとに、次の一手を決めましょう。
「なぜうまくいったのか」「なぜ結果が出なかったのか」を考え、次の計画に反映させることが成長の近道です。
良い結果が出た施策は、薬局全体の財産として共有しましょう。
他店舗に広げる前に、地域特性の違いを確認する

この記事では、処方箋枚数の根本にある「患者数」に注目し、新規患者獲得とリピート促進の具体策を紹介してきました。
振り返りポイント
かかりつけ薬局としての役割がますます求められる今、患者数増加は単なる売上向上だけでなく、薬局の存在価値そのものを高める取り組みとなります。
地域の患者さんに信頼され、選ばれ続ける薬局を目指して、ぜひこの記事の内容を実践に活かしてください。
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