「対人業務の充実」から考える
一歩先の薬局経営

患者さんのためにも、薬局経営にも「対人業務の充実」が重要な理由とは?

2022年6月8日公開

これまでに当記事において一歩先の薬局経営としてデータの活用を取り上げてきました。前回はそのデータの活用のなかでKPIとして「患者数」に注目しました。今回はその患者さん一人ひとりに合わせて提供する付加価値について、「対人業務の充実」をテーマにします。直近の2022年調剤報酬改定のトピックスに触れながら考えていきます。

※KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標
保険薬局のKPIについては、お役立ち記事「売上を因数分解して薬局の未来を考える」にて詳しく説明しています。

目次

対人業務とは

「対物業務から対人業務へ」というキーワードを目にする機会が多くありますが、これは2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」に明記されたことがきっかけになったといえます。

患者のための薬局ビジョンでは、「患者に選択してもらえる薬剤師・薬局となるため、専門性やコミュニケーション能力の向上を通じ、薬剤の調製などの対物中心の業務から、患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフトを図る」とあります。これに異論を唱える薬局経営者はいないのではないでしょうか。

2022調剤報酬改定のポイントは?

「患者のための薬局ビジョン」の公表以降、様々な制度の策定や改定には、この「患者のための薬局ビジョン」が反映されています。直近の2022年の調剤報酬改定でも「対物業務から対人業務へのシフト」がポイントの1つであったといえます。

例えば、これまでの調剤料、薬剤服用歴管理指導料が「薬剤調製料」「調剤管理料」「服薬管理指導料」に見直しがされました。

図1 薬剤調整料、薬剤管理料、服薬管理指導料

これは対物業務及び対人業務を適切に評価する観点から、薬局・薬剤師業務の評価体系について見直しを行ったと説明されています。それぞれ薬剤調製料を対物業務、調剤管理料、服薬管理指導料を対人業務として評価体系が見直されたといえます。

私は経営数値への影響を様々な企業様でシミュレーションする支援をしていますが、この評価体系の見直しについて、これまでの「調剤料」と新設された「薬剤調整料」と「調剤管理料」の合算に大きな変化はありませんでした。ただ今後、限られた財源のなかで評価されるのは対人業務である「調剤管理料」や「服薬管理指導料」であると考えられますので、確実に対人業務の要件を実行して算定できる体制を作っていくことが重要になります。

大きなプラスの影響があったのは

今回の調剤報酬改定において、大きなプラスの影響があったのは「地域支援体制加算」ではないでしょうか。地域支援体制加算の施設基準のうち「在宅」薬剤管理の実績が年間24回以上に見直されたことに加え、4つに細分化されました。施設基準を満たすことで、調剤基本料1を算定する薬局は地域支援体制加算1or2を加算できます。一方、調剤基本料1以外を算定する薬局では、地域支援体制加算3or4を加算できるようになりました。

調剤基本料1の薬局はこれまでの地域支援体制加算(38点)から新設された地域支援体制加算2(47点)を加算できること、また調剤基本料1以外の薬局も地域支援体制加算3(17点)や地域支援体制加算4(39点)を加算できることが大きくプラスに影響します。

図2 地域支援体制加算2〜4の詳細

今後、地域支援体制加算2〜4を積極的に加算していくには、今回の見直しから④かかりつけ、⑦在宅の推進が重要であると確認できます。それ以外にも③重複投薬・相互作用等防止加算、⑤外来服薬支援料、⑥服用薬剤調整支援料、⑧服薬情報等提供料の推進も同様に重要です。これらはまさに「対人業務」であり、地域支援体制加算の推進は「対人業務」の推進とつながっていることが確認できます。

調剤報酬改定と薬局経営と対人業務

2022年調剤報酬改定を薬局経営の視点から考えてみましょう。今回の改定された「対人業務」をこれまでも確実に推進してきた薬局は、以下のように算定できることになります。

処方箋の受付1回につき算定可能

 調剤基本料(1,2,3,特別)+地域支援体制加算(1,2,3,4)+連携強化加算
+後発医薬品調剤体制加算(1,2,3)+薬剤調製料+調剤管理料+服薬管理指導料

図3 処方箋の受付1回につき算定が可能な点数

上記は「処方箋受付回数1回につき」算定できるため、その影響は大きいです。基本料に関しては企業の規模が関係しますが、それ以外は各薬局において患者さん一人ひとりに提供した「対人業務」を蓄積した実績といえます。言い換えるとこれからの薬局経営は「対人業務」の実績と直結しているといえるのではないでしょうか。

算定要件の先に

今回のような改定を通じて各種加算の算定要件は対人業務の取組みのベンチマークになります。ただし、算定要件に達した後も取組みを継続することをおすすめします。対人業務の取組みに対して、次回以降の調剤報酬改定でそこが評価される、いわば後から評価がついてくる取組みを継続することが一歩先の薬局経営といえます。

また今回取り上げた「対人業務」にこそ、データを活用してはいかがでしょうか。「対人業務」として様々な加算を患者さんに提供したことによって、その後、患者さんにどのような変化があったのかを検証できると良いですね。例えば、服薬フォローを積極的に推進することで「患者数」が増加している(=継続来店率がUP)ことが確認できれば、より「対人業務」の提供を経営的にも推進することができると考えています。

一歩先の薬局経営

今回は「対人業務の充実」をテーマに調剤報酬改定をベースに薬局経営について取り上げました。いつか2022年調剤報酬改定は「対物業務から対人業務へ」調剤報酬がシフトされ始めたターニングポイントだったと振り返る日が来るのではないでしょうか。

また「対人業務」を推進するにはマンパワーだけに頼るには限界があります。どのような患者さんに何を提供できるかはこれまでの実績を分析すると見えてくるのではないでしょうか。継続的に患者さんに付加価値を提供(=対人業務)できる体制にはITの活用も検討していくと良いでしょう。

執筆者プロフィール

金指 伴哉

薬樹HD株式会社 執行役員
株式会社プレサスキューブ 取締役

2001年 東京薬科大学を卒業後、薬樹株式会社入社
2012年〜2020年 薬樹健ナビ株式会社 代表取締役
2016年〜現在    株式会社プレサスキューブ 取締役
2018年~現在    薬樹HD株式会社 執行役員

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