在宅医療における薬剤師の役割
ー医師が感じる在宅訪問での薬剤師の重要性ー

在宅医療における薬剤師の役割を「医師が感じる在宅訪問での薬剤師の重要性」から考えていきましょう。

2022年7月13日公開

近年、調剤薬局を取り巻く環境、求められる役割は大きく変わっています。地域医療への貢献は、その最たるものでしょう。国も、地域支援体制加算などの施策によって、調剤薬局に対して地域医療に積極的に参加するよう促しています。一方で、調剤薬局側は体制作りなどの問題から必ずしも積極的に受け入れているわけではないという現状があります。なぜ、そのような事態に陥っているのか、在宅医療の現場をよく知る医師と薬剤師の対談から、現状の課題を浮き彫りにするとともに、今後薬局と薬剤師が地域医療にどうかかわっていくべきかを探っていきます。

左から薬剤師の坪田さんと医師の村野さん

第1回では、坪田さんからは、調剤薬局が個人宅への在宅訪問に積極的になれない理由をあげていただいたうえで、在宅訪問専任スタッフを置くことがその解決策になるのではないかというご意見をいただきました。今回は、その点について詳しくお聞きしたいと思います。

在宅訪問に現場薬剤師が積極的に取り組むには

―― 調剤薬局が個人宅への在宅訪問に積極的になれない理由を解消するために、在宅訪問専任スタッフを置くという解決策をご紹介いただきました。詳しく教えてください。

坪田 外来をメインにしている調剤薬局に在宅訪問の処方箋が来た場合、スタッフは外来の仕事がひと段落してから取り掛かることになります。忙しいときには、緊急を要する在宅訪問の処方箋があることに夕方まで気づかなかった、というような事態も起こり得ます。現場の忙しさを考えると、そもそも外来と在宅訪問のオペレーションをひとつのラインで行うことに無理があるともいえますね。多くの薬局では、在宅訪問の処方箋を受け付けるFAXが通常利用しているものと同じ番号になっているのではないでしょうか。

 

村野 外来とオペレーションのラインを分ければそのような事態は避けられそうですね。ただし、在宅訪問の件数をそれなりに抱えているところ以外では、コスト面で難しいのではないですか。

 

坪田 ドミナント展開している薬局では、地域全般を担当する専任スタッフを置くことで可能になると思います。処方箋は店舗で受け付けて調剤し、専任スタッフが各店舗から薬を受け取り、患者さん宅に届けるという形です。大手チェーン店の中にはそういった体制を整えているところもあります。

 

村野 単店舗ではどうでしょうか。

 

坪田 地域の薬局で協同することを考えてもいいのではないでしょうか。地域医療を担うという在宅訪問の目的からすれば、クリアすべき課題はあるにせよ、一考に値すると思います。ただし現状、そのような協力体制を地域で連携する仕組みがあるか、現場スタッフから歓迎されるかといえば難しい面もありますね……(苦笑)

 

村野 私も自社で請け負っている施設の在宅訪問について、いまは各店舗で割り振って対応しているのですが、効率面と、スタッフのスキルアップの面から専門部署を作るべきだと従来から考えていました。ただし、さまざまな事情から実現には至っていません。また、複雑な粉処方などにおいては万一調剤にミスがあった場合、自らの調剤でないと責任を負えないという意見が一部あります。

 

坪田 たしかにそのような懸念がありますね。ただ、うちではそういう意見は今のところ出ていません。スタッフの意識を変えるには、経営側もインセンティブを与えるなど、工夫する必要があるとは思います。

在宅訪問では医師と薬剤師の信頼関係が必須

―― 村野さんは在宅医療専門医として地域医療に貢献されています。ひとくちに在宅医療といっても、患者さんの置かれている状況によって向き合い方は大きく変わると思います。難しさを感じることはありますか。

村野 がん治療中の方、病状が安定している慢性疾患の方など、患者さんの状態は千差万別です。当然診察時間も変わります。前者のケースでは1時間以上じっくりお話を伺うことも多いですが、症状が安定している方では15分くらいで済むことも珍しくありません。診療報酬の観点からみると、どちらも基本的な評価は同じです。報酬だけを考えたら、15分を数多く回ったほうがいい。そう考える医師、経営者も実際にいます。もちろん大多数は真摯に患者さんに向き合っていますが。

また在宅医療には、予後一カ月といった終末期の方も含まれます。これは、医師にとっても心理的負担が少なくないものです。たとえば、がんが発覚したときにはすでに全身転移していた、というようなケースでは、ご本人・ご家族の動揺や葛藤とも向き合わなくてはなりません。そうした点で、外来とは異なる難しさはあると思います。

 

―― 在宅医療で薬剤師と一緒に活動されることはありますか。

村野 はい、患者さんのご自宅に薬剤師と同行することもありますが、それに限らず、私個人としては薬剤師にも、患者さんの生活を支えるチームの一員として力を貸してもらいたいと常々思っています。処方後の薬剤がどう飲まれているかの管理までは手が回らないからです。たとえば依存性のある睡眠薬をやむなく処方した場合、適切な服用方法をなされないことが珍しくありません。日数的にまだ残りがあるはずの薬が「もうなくなってしまった」と連絡が来ることも珍しくありません。

その他にも、ご自宅で管理されている薬剤の把握に時間がかかってしまうことや、処方した数日後に他院からの処方薬や、以前処方した残薬が見つかることもあります。特に外用薬はそのような傾向がありますね。服薬管理を薬剤師に任せられれば、そうした心配はなくなります。もうひとつ、薬剤師に入ってもらうことの利点は、副作用の確認・早期発見や薬の自己中断を未然に防ぐことを依頼できる点です。私がご一緒している薬剤師の方々は、みなさん快く引き受けてくださいます。

 

坪田 医師からの依頼は無下にはできません(笑)。私からも村野さんにお聞きしたいのですが、逆に薬剤師に対して不満を感じることはありませんか。

 

村野 ある高齢者施設で訪問診療をしているときにありました。とある在宅訪問薬局からの報告書を見て、施設に毎週必ず薬剤師が来ていることになっていて。「そんなに必要なのか?」と思い患者さんに確かめたら、毎週は会っていないと。恐らく経営者の方針で、患者の状態に関係なく月4回の算定のために施設を訪問し、バックグラウンド業務だけを行い患者訪問をせずにいたのだと思います。もちろん月4回算定を否定しているわけではないです。終末期や退院直後など不安定な時期ならその必要性がわかります。訪問する必要があれば来る、なければ来ないほうがいいと言いました。誰のためにもなっていない行為だったからです。

 

坪田 そうなると、不正請求と同じようなものですね。

 

村野 それを命じていたのは、会社の上司だったのだとは思います。だからと言って、担当の薬剤師の責任が減免されるものではありません。もっと自分の頭で考えて、責任を持って行動してもらいたいと思いました。

 

坪田 信頼関係を損なう行動ですから、薬局変更の契機にもなりえます。

 

村野 在宅医療というのは、別々の法人組織がそれぞれ、患者さん宅を短時間訪れ、連携してサポートするわけですから、情報としては点の集まりに過ぎません。それを可能な限り線に近づけていくうえで、信頼関係は必須です。

 

―― 信頼関係は在宅医療ではとりわけ大切ということですね。坪田さんにお聞きしたいのですが、医師との信頼関係を築くために心がけていることはありますか。

 

坪田 新規で在宅医療へ介入のご依頼をいただいたら、初回訪問には同席することを心がけています。初回訪問に同席することで治療方針などを共有いただけることはもちろん、残薬整理や退院時処方の引き継ぎチェック、適切な剤形や用法提案など患者さんと医師の負担を減らせる提案を行うこともできます。総じて処方箋に記載されている以上の情報を得ることができますし、患者さんとの信頼関係構築もスムーズです。詳しくは次回(9月14日(水)公開予定「チーム連携をスムーズにするために必要なこと」)触れると思いますので割愛しますね。

基本的には薬局・薬剤師として医師あるいはチームから求められている役割を果たせるよう努力をするだけですが、余力のない状態で在宅対応をしている薬局では難しいかもしれません。たとえば患者さんの容態によっては臨時で麻薬が必要になるケースが出てきますが、担当しているのに「土日には対応できません」という薬局や、休日に連絡がつながらない薬局があります。それは担当している薬局として体制に疑問がありますね。

 

村野 なるほど。そこまでされているのですね。休日の麻薬処方に対応してくれる薬局は私もあまり聞いたことがありません。ちょっと話は変わりますが、坪田さんのところでは、新規案件はどうやって始まるケースが多いのですか。

 

坪田 在宅専門のクリニックからの依頼が8割くらいですね。

 

村野 やはり、そうですか。他の方からも、クリニック経由が大半ということを以前聞いて驚いたことがありました。ケアマネージャーや患者から依頼される割合がもっと多いと想像していたものですから。となると、薬局の立場からすれば、日ごろから如何にしてクリニックとの信頼関係を作っていくことが大切か、ということになりますね。

 

――次回は、9月14日(水)公開予定「チーム連携をスムーズにするために必要なこと」

在宅医療でチーム連携をスムーズにするために、薬剤師ができることのヒントを坪田さんにご紹介いただきます。

次回、「チーム連携をスムーズにするために必要なこと」を先行して読みたい方はこちら

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執筆者プロフィール

村野 賢一郎

株式会社グリーンファーマシー 代表取締役
在宅医療専門医(日本在宅医療連合学会)
麻酔科認定医(日本麻酔科学会)
早稲田大学人間科学技術院招聘研究員(環境心理学)

東京慈恵会医科大学卒。終末期癌患者等を対象とする緩和医療を志し、麻酔科、在宅医療の現場で修練。現在は東京三鷹市を中心に在宅緩和医療の現場に従事。その傍ら、2017年より、株式会社グリーンファーマシー代表取締役。薬局薬剤師の社会的貢献度向上が医療全体の質向上につながると考えて薬剤師育成など実施している。

坪田 留央依

薬剤師
株式会社バンブー 薬局事業部長
一般社団法人薬局支援協会理事

在宅訪問に注力した薬局として地域の医療機関からの在宅訪問依頼の最後の砦として、在宅で治療を継続する患者・家族を支えている。

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