在宅医療における
薬剤師の役割
ーチーム連携をスムーズにするために必要なことー

在宅医療に「チーム連携」は重要です。薬剤師にはどのような行動が求められているのでしょうか。

2022年9月14日公開

近年、調剤薬局を取り巻く環境、求められる役割は大きく変わっています。地域医療への貢献は、その最たるものでしょう。国も、地域支援体制加算などの施策によって、調剤薬局に対して地域医療に積極的に参加するよう促しています。一方で、調剤薬局側は体制作りなどの問題から必ずしも積極的に受け入れているわけではないという現状があります。なぜ、そのような事態に陥っているのか、在宅医療の現場をよく知る医師と薬剤師の対談から、現状の課題を浮き彫りにするとともに、今後薬局と薬剤師が地域医療にどうかかわっていくべきかを探っていきます。

左から薬剤師の坪田さんと医師の村野さん

第2回では、在宅訪問でどのような薬局・薬剤師が医師や在宅医療にかかわる方から求められているのかを教えていただきました。今回は「チーム連携をスムーズにするために必要なこと」をテーマに、在宅医療で薬剤師に求められていることを考えていきます。

チーム連携をスムーズにするために必要なこと

―― 前回までのお話で、在宅医療で求められる薬局・薬剤師の姿が具体的にわかってきました。体制を整え、在宅医療への心構えをしたところで、実際どのように在宅訪問件数を増やしていくのでしょうか。

 

村野 在宅訪問の新規依頼は、在宅専門のクリニックからが圧倒的に多いとのこと。在宅訪問件数を増やすには、クリニックとの信頼関係の構築が欠かせません。坪田さんのところではどのような取り組みをされていますか。

 

坪田 必ず実行しているのは、往診同行です。施設であれば医師の往診には毎回立ち会います。個人宅でも初回診療は同行させてもらっています。

 

村野 往診同行は、調剤薬局、訪問薬剤師にとってどういうメリットがあるのでしょうか。

 

坪田 往診同行をすることで他の関係者と顔を合わせる機会を多くするということが一番のメリットです。特に初回往診時は医師以外にも、ケアマネージャー、看護師らが参加します。実際に顔を合わせて「なにかあったら言ってくださいね」とひとこと言っておくだけで、その後の連携はスムーズになりますし、チームの一員として積極的にサポートしていくという意思表示にもなります。医師とも直接話ができるいい機会です。

 

村野 確かに、初回往診時は患者さんや患者さん家族、在宅医療に関わる医療者が一堂に会することが多いですね。また、その後そのような機会は少ないですよね。

 

坪田 患者さん側にとっても、安心につながります。個人宅を例にあげると、薬剤師は基本的にひとりで薬剤を届けに来ることが多くなりますが、見知らぬ人を自宅に上げたくはないでしょう。そうなると残薬確認もままならず、玄関口で薬を届けて料金を受け取るだけの配達業務になってしまいます。初回にきちんと顔を出してあいさつしておけば、自宅に上げるという心理的ハードルは下がります。訪問する薬剤師にとっても、一人で初めてお会いする方のご自宅に1人でおじゃまするというのは心理的ハードルがあると思いますので、お互いの安心につながると言えますね。

往診同行は、それ自体は直接的に利益を生むものではありませんが、薬局、訪問薬剤師にとってメリットしかないと思います。

 

村野 施設の訪問診療ではいかがですか。

 

坪田 施設の訪問診療では、往診同行の前に送られてくるバイタルデータや申し送り事項などに目を通しておいて、課題や問題があればあらかじめ対策を考えておきます。医師が入るよりも早く訪問して施設の看護師らと打ち合わせをしたうえで、医師にはそうした情報を伝えたり、解決策を提案したりします。薬剤について医師から副作用確認などを求められた場合は、その場で調べてお答えするか、持ち帰ってから伝えるようにしています。

私のほうからも村野さんにお聞きしたいのですが、施設に関していえば、時間も限られていますし、診療は大変そうです。実際にはいかがですか。

 

村野 施設の訪問診療は患者さん宅への訪問診療と比べ、難しい点が多いです。大きな要因は、治療方針を決める際のキーパーソンである家族の不在にあります。家族の訪問と診療のタイミングが偶然に重なることなど皆無ですから、意思疎通が難しいのです。いざというときにどうするのか、最期は施設、病院、自宅で迎えるのか、そうした決め事が棚上げされたままのケースもあります。大切なことだけに、事前の話し合いができていないことでトラブルが起こりやすいというのが正直な印象です。それでいて施設への訪問に対する診療報酬は改定で下がりましたから、行きたがらない医師も多いでしょうね。

また、施設を受け持つクリニック側に問題があるケースもあります。「一人当たり何分で、何時までに何人を診療する」というように予定を組んでしまうのです。それ自体は悪いことではありませんが、場合によっては少ない時間で多くの患者さんの診療をする必要がでてきます。もちろん、診療はそう機械的に済むものではないので、どうしても丁寧な診療が叶わず、その代償を払うのは患者さんになってしまうのです。医師側もそのようなスケジュールの依頼の際には、施設やクリニック側としっかりと相談をして、適切な医療を提供できるように交渉する必要があるといえますね。

医師への連絡手段として最適な方法は!?

―― 最後に、在宅訪問をする際の、医師と薬剤師間の連絡方法というテーマでお話いただきたいと思います。医師から薬剤師へは、基本的には処方箋があります。一方、薬剤師から医師へは在宅訪問の報告書提出が義務付けられています。報告書に関しては、実際に現場ではどのように機能しているのでしょうか。

 

坪田 報告書は月間で何百枚とFAX送信しています。ただ、それが医師のもとに実際に届いて、読まれているのかといえば、疑問があります。

 

村野 医師のもとに届くかは、クリニックの事務担当者にもよります。ただし届いたとしても、本当に重要な情報は別として、すべてに目を通す時間はないというのが実情です。

 

坪田 報告書は提出が義務付けられているとはいえ、医師とタイムリーに連絡を取る手段としては適していないように思えます。うちでは伝達事項があるときには電話を使うことが多いです。もっとも確実な手段だからです。医師側もそのことがわかっているから報告書を重要視していないこともあります。こういった現状では報告書に存在意義を見出すことは難しく、労力をかけたくないというのが本音です。

 

―― 報告書作成の労力削減の工夫は何かされていますか。

 

坪田 在宅業務専用の管理システムを利用しています。クラウド型なので店舗や訪問先からアクセスできます。FAX送信も自動設定です。

 

―― 当社の『CARADA 電子薬歴Solamichi』も報告書の作成が簡単にできます。しかし、いまの坪田さんのお話を聞いていると、報告書はあくまでも事後報告のための書式に過ぎないということのようですね。

 

坪田 医療介護現場のコミュニケーションツールを利用することもあります。私がよく使うシステムは多職種の人がアクセスできるようになっているので、情報の共有という観点からいえば、現状もっとも適したツールだと思います。しかし、同じシステムを全員で導入している場合でしか使えません。

 

村野 薬剤師からの報告書も個人的には必要だと感じています。たとえば残薬の情報はぜひ伝えてもらいたいです。患者さん宅に湿布がいつの間にか半年分くらい積み重ねられている、なんてケースもありますから。また、よくあるケースとしては新規処方の自己判断での服薬中断です。例えば抗うつ剤は、副作用が複数ありますが、それを過度に恐れて自己判断で服薬を中断されてしまう方もいらっしゃいます。在宅の場合は、ホームグラウンドの意識が影響するのか、外来に比べて自己判断での服薬中断が多くなる傾向があります。

こうしたことはトレーシングレポートや報告書でぜひ伝えて欲しいです。さらにいえば、自己判断での服薬中断を予防するフォローアップや残薬の理由と、それを解消するための提案があればなおありがたい。たとえば痛み止めを処方したけれども、患者さんに服薬の負担が大きかったとして、ほかの薬剤に変更するのか、坐薬にするのか、そこは医師よりも薬剤師のほうが詳しいと思います。もっとも、報告書が読まれずに放置されてしまうようであれば意味ありません(苦笑)。どうしたら読まれるようになるのでしょうか。

 

坪田 どういうプラットフォームになるのかは別として、オンラインで結ぶ以外ないでしょうね。重要なものが自動選別されるようになれば見落としも防げます。

 

村野 それはいいかもしれません。既読マークもつければ、読まれたかどうかもわかります。

 

坪田 そのあたりは、ソラミチシステムをはじめとしたシステム開発会社の今後の商品開発に期待することにしましょう。

 

―― 当社でも報告書やトレーシングレポートについて、いかに現場の薬剤師の作業労力を少なくするかという観点も重要視して開発しています。どのようにしたら必要な情報が必要なタイミングで読まれるのかという点についても今後改善をしていきたいと思います。貴重なご意見、またお忙しいなかでの企画へのご参加、ありがとうございました。

第1回「在宅患者訪問薬剤管理指導の現状」

第2回「医師が感じる在宅訪問での薬剤師の重要性」

執筆者プロフィール

村野 賢一郎

株式会社グリーンファーマシー 代表取締役
在宅医療専門医(日本在宅医療連合学会)
麻酔科認定医(日本麻酔科学会)
早稲田大学人間科学技術院招聘研究員(環境心理学)

東京慈恵会医科大学卒。終末期癌患者等を対象とする緩和医療を志し、麻酔科、在宅医療の現場で修練。現在は東京三鷹市を中心に在宅緩和医療の現場に従事。その傍ら、2017年より、株式会社グリーンファーマシー代表取締役。薬局薬剤師の社会的貢献度向上が医療全体の質向上につながると考えて薬剤師育成など実施している。

坪田 留央依

薬剤師
株式会社バンブー 薬局事業部長
一般社団法人薬局支援協会理事

在宅訪問に注力した薬局として地域の医療機関からの在宅訪問依頼の最後の砦として、在宅で治療を継続する患者・家族を支えている。

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『CARADA 電子薬歴 Solamichi』で作成する計画書・報告書

『CARADA 電子薬歴 Solamichi』の介護計画書や報告書の作成機能を使えば、居宅療養管理指導時に必要となる計画書や報告書を短時間で簡単に作成することができます。作成画面にて必要な情報を入力し、印刷ボタンを押すだけで、そのまま医師やケアマネージャーに提出できるフォーマットで出力できます。

『CARADA 電子薬歴 Solamichi』計画書作成画面

お客様からの声

在宅訪問時に活用、報告書作成も出先で対応!

介護施設などで訪問薬剤管理指導をしているときに、『CARADA 電子薬歴』をリモートで活用しています。前回の薬歴内容を確認し、同時に報告書の作成もできるので非常に効率的です。店に戻って改めてパソコンを開き作成する必要がありません。

そよ風薬局小手指店(埼玉県)

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