医療の流れが示す「選ばれる薬剤師」へ。信頼関係がもたらす効果と次につながる視点。
2025年11月19日公開
薬剤師として働いていると、「もっと患者さんと話す時間があれば」「信頼関係を築きたいけど、どうすれば…」と感じることはありませんか。 対人業務の評価が高まる今、患者さんとの関係づくりこそが、薬剤師の存在価値を決める重要な要素になっています。
この記事では、なぜ患者さんとの信頼関係が大切なのか、そして薬局経営にどんなメリットをもたらすのかを解説します。患者さんの不安に寄り添い、安心して相談してもらえる存在になるためのヒントを一緒に見つけていきましょう。
薬剤師に求められる役割が大きく変化しています。以前は「薬を正確に調剤して渡す」ことが中心でしたが、今は「患者さんに寄り添い、健康を支える」役割へと広がっています。
2015年に厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」にて、薬剤師の役割を 「対物業務」から「対人業務」 にシフトすることが提唱されました。
その後の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師業務や服薬指導、フォローアップの評価が拡大し、患者対応の比重が確実に増えています。社会全体が薬剤師に対し、単なる薬の専門家ではなく、患者さんの心に寄り添う相談相手としての役割を強く求めているのです。
参考:厚生労働省 患者のための薬局ビジョン ~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~(平成27年10月23日)
医療全体が「患者中心のチーム医療」を重視する流れになっています。これは、医師だけでなく、薬剤師、看護師、その他の医療従事者が連携して、患者さんを中心とした最適な治療を提供するという考え方です。
この患者中心のチーム医療を実践するためには、患者さんの真の状況やニーズを正確に把握することが重要です。 しかし、「薬は飲んでいます」「副作用はありません」といった表面的な会話では、患者さんの本音や生活背景を知ることはできません。何でも話せる関係があってこそ、「実は飲み忘れが多くて」「めまいがするけど我慢していました」といった本当の情報を得られるのです。
つまり、患者さんとの関係づくりは、チーム医療において薬剤師が専門性を発揮するための必須スキルとなっているといえるでしょう。
患者さんとの良好な関係は、薬局経営にもメリットをもたらします。関係性の構築は決して感情論ではなく、経営や医療の成果につながるのです。
患者さんとの信頼関係を築けると、「また、あの薬剤師さんに相談しよう」と思ってもらえ、再来局率の向上につながります。
また、調剤報酬の面では、「かかりつけ薬剤師指導料」の算定率向上が期待できます。この加算の算定には患者さんの同意が必要ですが、信頼関係があるほど同意率が高くなります。さらに、「服薬情報等提供料」や「重複投薬・相互作用等防止加算」なども、患者さんとの日常的なコミュニケーションがあってこそ算定可能な加算です。
これらを合わせると、信頼関係の構築は薬局の収益に大きな影響を与えることがわかります。
地域包括ケアシステムにおいては、薬剤師には在宅医療や多職種連携での 「いつでも頼れる伴走者」 としての役割が期待されています。
特に在宅訪問では患者さんのプライベート空間に入り込むため、深い信頼関係なしには成り立ちません。患者さんからの信頼が厚い薬剤師の情報提供や提案は、医師や訪問看護師などの多職種からも一目置かれ、連携の中心を担いやすくなるでしょう。これにより、薬局全体の地域における存在価値も大きく高まります。
患者さんから信頼される薬剤師には、どのような特徴があるのでしょうか。現場での患者対応を振り返りながら、信頼関係構築のポイントを見ていきましょう。
多くの患者さんが病気や治療に対して不安感を抱えています。「この薬で大丈夫だろうか」「副作用が出たらどうしよう」といった不安を誰かに聞いてほしいと思うことは少なくないでしょう。
そのため、専門知識はもちろん重要ですが、それ以上に「自分の話を聞いてくれるか」「親身になって寄り添ってくれるか」といった人間性や対応力が、患者さんにとっての安心感の源となり、信頼の基盤となります。
患者さんから「また相談したい」と選ばれる薬剤師には、傾聴力と寄り添う姿勢という共通点があります。薬の情報を伝えるよりも、患者さんの話に丁寧に耳を傾け、言葉の裏にある真のニーズや治療への不安を汲み取ることを大切にしているのです。
患者さんの立場に立って共感を示し、「大丈夫ですよ」「一緒に考えていきましょう」といった言葉で安心感を与えることで、薬の専門家であると同時に、心強い相談相手としての関係を築くことができます。
信頼関係の構築は、特別なスキルや長時間を要するものではありません。日常の業務の中で、ちょっとした意識の変化と工夫により、患者さんとの関係性を大きく改善することができます。
処方箋を受け取る瞬間から、関係づくりは始まっています。目線を合わせる、優しい表情で接する、丁寧な言葉遣いをするといった基本的な姿勢により、患者さんに「この人なら話しやすそう」という第一印象を与えることができます。
そして、患者さんの名前や前回の相談内容を覚えているなど、小さな積み重ねが「この薬剤師さんは私のことを覚えてくれている」という特別感を生み、継続的な信頼関係の土台となります。
服薬指導は、単なる情報伝達から、患者さんの行動変容を支援する対話へと進化させる必要があります。
薬の効能・副作用の説明だけでなく、「何か不安なことはありますか?」「困っていることはありませんか?」など、開かれた質問を投げかけることで、真の不安や疑問を引き出すことができます。
患者さんが「薬を飲み忘れることがあって...」と打ち明けた時、「きちんと飲んでください」と指導するのではなく、「忙しい毎日の中で大変ですよね。何かできることがあるか一緒に考えてみましょう」と共感と解決志向の姿勢を示すことが大切です。否定しない姿勢と傾聴力により、患者さんは安心して本音を話せるようになり、より質の高い服薬指導につながります。
専門用語を避け、患者さんの理解度に合わせて説明のレベルを調整する工夫が必要です。患者さんにとってのメリットが伝わる表現を使うことで、薬への理解と安心感が深まります。
AI音声入力を使うと、患者さんとの会話が自動でテキスト化されます。メモを取る必要がなくなり、服薬指導では目の前の患者さんとのコミュニケーションに集中できます。


薬剤師が真の「かかりつけ薬剤師」として地域医療に不可欠な存在となるためには、患者さんとの信頼関係こそが、あなたの専門性やスキルを最大限に活かすための揺るぎない土台となります。
制度の変化は、私たち薬剤師に「人」としての関わり方を問いかけています。傾聴や共感の姿勢を通じて患者さんの心に寄り添うことができれば、あなたは必ず「選ばれる薬剤師」になることができます。
本記事で解説した関係づくりの重要性とコミュニケーションのポイントを意識し、日々の業務に活かしていきましょう。あなたの向上心が、必ず患者さんの安心と、薬局の未来を創ります。
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